果詩合夏の陣を終えて
8/11、山の日。
まずこの「果詩合」について少し説明しておきたい。実はこの催し、2回目は行う予定は無く、1回こっきりで終わる筈だった。そもそもこの「果詩合」は、ハルタが昨年の夏頃「色々な事」に巻き込まれ、全てが嫌になってしまったため、「最後に自分が戦いたいと思った人を誘って共に戦い、華々しく活動を終える」為だけに開かれた、所謂「自己満」の大会という位置付けだった。
第1回目は2023/3/19に開催された。自分がお誘いしたとは言え、この回は錚々たる顔ぶれが集まっており、1つの大会にこれだけのメンバーが出場者として一堂に会する事は今後あり得ないだろうと今でも信じて疑わない程である。その中で優勝を勝ち取ったのは、躍動感溢れる圧巻のパフォーマンスを披露し、見る者の心を掴んで離さなかったもりさんであった。とは言え、決勝では2位の大島健夫さんとは1票差、3位の蛇口さんとも2票差と決して圧勝という訳ではなかった。異なるスタイルを持つ三つ巴の勝負の行方は最後の最後まで分からず、まさに手に汗握る戦いだったと言えよう。そのもりさんは今大会(第2回)、ゲストライブとして出演して下さり、見事初代王者としての貫禄を存分に見せつけて下さった。もりさんのパフォーマンスは見る度に思うのだが、言葉と精神と肉体ががっちりと連動していてどこも無駄がなく、絶対に観客を置き去りにしない安心感と幸福感を与えてくれる。素晴らしい20分間を本当にありがとうございました。
第1回大会終了後、江古田駅近くの日高屋にて打ち上げを行ったが、そこで色々な方にこんな事を言われた。
「打ち上げをしたくなるイベントは、それだけ素晴らしいイベントだったって事だよ。」
その一言を聞いて、何か心がジーンと来てしまった。そして人間の心境というのは恥ずかしいほど移ろいやすいものである。打ち上げに参加している時にはもう既に「1回で終わらせるのは勿体ねぇなぁ」と心変わりしてしまっていた。単純な奴!
勿論、詩の評価軸が「スラム」だけに絞られてしまうのは余り好ましくはない事だとも思っている。大島健夫さんなども普段仰ってるように本来ならば「詩は優劣をつけるものではない」からだ。各々好きな作品があればそれで良いし、作品の受け止め方なんて人それぞれなのだから。
それでも実質初めて大会を主催してみて、舞台袖から「勝敗」の狭間で揺れながら身を削ってパフォーマンスをする出場者の姿を見ていると、やはり込み上げてくるものがあった。こういう場所に出場する人は皆、勝ちたいという気持ちもあるのだろうが、熟自分の作品を信じてやまないのだと感じた。「言葉」という人類ならば誰にでも与えられる特権を駆使して、鎬を削って相手に立ち向かう姿は綺麗なだけでは済まさない独特な美しさがある。上辺だけの美辞麗句では留まらない剥き出しの生き様をぶつけ合う場所、それがポエトリースラムであり、それが「果詩合」なのだと思い知らされた。
第1回も勿論盛り上がったのだが、第2回はそれに加えて終始異様な緊張感が会場を包んでいた。それは審査員に大島健夫さんや葛原りょうさん、といった重厚な面々が揃っていたのもあるが、やはり自分の予想以上に出場者全員がこの「果詩合」に対して真剣に向き合って下さった事で、大会を催す上での素晴らしい緊張感が産まれたのだと思う。普段飄々として冷静なPARAさんが敗退後かなり悔しがっていた姿、モリマサ公さんが泣いて悔しがっていた姿、スラム自体がかなり久々で手を震わせながら朗読していたTsu白ma yukoさんの姿、そして一度敗退してから復活、決勝進出、無念の敗退まで、出場者の中で一際感情をダイレクトに表していた毎亡ヤンさんの姿…他の方々も真摯に自分の作品と向き合いながらパフォーマンスしていて、それが本当にかなり人間臭くて、美しいとしか言いようがなかった。特に終始悔しさを1番隠さずに顕にしまくっていた毎亡ヤンさんの姿はこの大会の象徴と言っても過言ではなかった。まだ20いくばくの彼が泣いて悔しがる姿を見ただけでも「ああ、本当に、2回目をやって良かったなぁ。」と心の底から思えた。そしてもう一つ印象的だったのはTsu白ma yukoさん。彼女は出場前はスラムなど競う類のものを苦手としていたが、「ハルタくんが主催なら」と快く参戦してくれた。そんな彼女も大会後は高揚感に満ちた顔で「出て良かった」と言って打ち上げにまで参戦してくれた。最後にそんな思いを抱いてくれたのは、やはり他の皆様が誤魔化す事なく生き様を剥き出しにしてぶつかってくれたからだろう。これを書いている今も頭が下がる思いでいっぱいである。
優勝を勝ち取ったのは坂本樹さん。
第1回目から2回連続で出場し、前回は惜しくも準決勝で敗れたが、今回は大会トップバッターながらフルスロットルで駆け抜け優勝をもぎ取った。担任の先生へ揺るがない意志を問いかける切ない作品から「バズりたい」欲をこれみよがしに叫び続ける貪欲な作品まで非常にバラエティに富んでおり、何というか見ていて本当に隙が無かった。最後「FAX」で締め括った彼はまさしく詩に取り憑かれた悪魔のようで非常にギラギラしていた。作品自体もそうだがこの日の彼は大会にかける姿勢までも非常に貪欲だった。大島さんも仰ってた通り「どこでやっても恥ずかしくないパフォーマンス」を示しており、そらぁ優勝するわなと感服した。
優勝後の坂本樹くん(こっからはあえて君付けで)のインタビューがまた刺さった。
「ハルタダイチという男を語る上で僕が1番凄いなと思っている所があって、ハルタダイチのいる所ってちゃんとハルタダイチの事が好きな人間が集まるなと思ってて。」
「今大会に臨む上で作品を考えた時に、ハルタの事が好きで集まった人たち、そしてハルタの事を信じて、ハルタが好きそうなやつを持っていけば勝てるんじゃないか。その1点のみで作品を揃えて。」
…いやもう、何と言えばいいのか。何だこの愛に満ちた作戦はと。その後、俺への労いのLINEでも彼は「ハルタくんの作る場所を一番信じていたのが俺だったから勝てたと思ってます。」とまで言ってくれた。信じる事ってかなり難しいんだ。裏切られる事もあるし、叶わない事の方が山程あるし。だけど彼は何の変哲も無い男が開催する大会と、その男と、その男のもとに集まった人たちを信じて最後までぶつかった。そして優勝した。中々できないよ、そんな事。お礼を言うのは何だか変かもしれないがここは敢えて言わせて頂く。
「本当に、信じてくれてありがとうございました。」
そして何よりも審査員の皆様である。
的確な批評をしながらも、出場者全員に尊敬の念を込める事を忘れなかった大島健夫さん、葛原りょうさん。そしてそして急遽スタッフをやりながら審査員に回ってくれた救世主・公社流体力学くん。本当にありがとうございました。御三方の的確且つ忖度の無い真剣な審査が、大会を物凄く価値あるものへと押し上げてくれました。敗退した方々も御三方のコメントのおかげできっと悔しさだけで終わらず救われた部分もあったに違いありません。特に公社くんは急な代役だったのにも関わらず目から鱗が出るような的確な審査をしてくれて、非常に助かりました。重ね重ねありがとうございました。
第1回から主催しながら自らも参戦するスタイルを継続していたが、次回以降は主催に専念するだろう。今回やってみて、どっちつかずは良くないと思ったし、何より敗退直後に大島さんに言われた「あなたは詩から何かを貰うよりも、もう人に何かを与える側になれると思います」というコメントにとても胸打たれてしまったので。まあ、実際はまだまだそんな大層な存在でも無いのだが、尊敬する方の後押しする一言を信じて今後も無理の無い範囲で継続していきたいと心から思った。
第3回、果たしていつやるのかはまだ検討もついてない。その前に面白い試みも考えている。しかし何にせよやらなければならない。「3回目絶対やれよ!」と言ってくれた暫定王者をゲストライブに出迎えなければならないのだから。
この素晴らしい号外は、当日お客様として来場して下さったA子さん(X=@e_i_k_)が大会終了後に急遽作成して下さった代物です…!いや完成度高すぎて泣く😭、嬉しすぎる!!(語彙力破綻)
改めて、出場者の皆様、お客様、審査員の皆様、ゲストライブに出演して下さったもりさん、救世主の公社流体力学君、そして場所を提供して下さった兎亭及び店主の斉藤可南子さん、関わって下さった全ての方々に、ただ、只管、感謝。
※追伸
個々の方々に対する感想についてはまた後日書こうかなと思っています。
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