「Lilac EP」を存分に解説しようじゃないか。



来る1015日、私ハルタダイチ主催の「Lilac EP」リリースパーティーが日暮里工房ムジカにて開催されます。ゲストも多嘉喜さん、残響のお2人と豪華なメンバーが揃っております。


因みに超どうでも良い情報ですが、開催日はガチ親父の誕生日でございます。あ、親父はLIVEには来ません。あしからず。


当日はEPのフィジカル盤(CD)と私の詩集も発売する予定です(あの、買って下さい、お願いします、切実に、マジで、ええ、ええ、ええ。)


それに先立ちまして、内容及びLIVEを更に楽しんで頂く為に、「Lilac EP」に収録されている楽曲の解説をさせて頂きます。これを読んで世界観を理解して、思う存分楽曲を堪能していきましょう‼️




 坩堝



「坩鍋」という単語は「中に物質を入れて加熱し、浴解・焙焼(ばいしょう)・高温処理などを行う耐熱製の容器」の事を指すのですが「熱狂的な興奮に沸いている状態」または「種々のものが混じり合っている状態や場所」という意味も持ち合わせております。


猿武さん制作のトラックを聴いた瞬間、まさに湧き上がるマグマのような印象を受け、そこに私と多嘉喜さんのラップが入る事によって更なる熱狂が産まれるのではという思いからこの単語をタイトルに選びました。また、各々違う人生を歩みながらも「詩」というジャンルで出会った我々が曲を通じて「混じり合っている」という意味も込めております。


因みにアートワークも猿武さんが作成して下さりました。しっかりとテーマに沿った、魂が揺さぶられる素晴らしいデザインでございました。


ラップの本格的なRECは初めてだったので、まあ緊張しました。それでも何とか録り終え、RECしたものを聴き返すと、自分の声ながら「なーんかどこかで聴き覚えのあるフロウだよなぁ」などと思っていたら、多嘉喜さんが「ハルタさん、完全にMAKI THE MAGICさん(1)が乗り移ってましたね」と伝えて下さり、ああなるほどなぁと納得しました笑。私、高校時代から筋金入りのキエるマキュウ(2)ファンなのですが、やはり影響というものは避けて通れないものだとしみじみ思いました。とは言え尊敬する方と比べられる事は大変嬉しい限りでございます。


また多嘉喜さんのラップが勿論素晴らしい。聴いているだけで思わず背筋が伸びてしまいます。まあラップ歴は勿論多嘉喜さんの方が長いので言わずもがななのですが、やはり貫禄が段違いです。こういった方と一緒にやれるだけで幸せの極みですね。



 Utopia


笹谷創さんが爪弾くどこか寂し気なトラックは、気づいたら自然と自分の中で「居場所」というテーマに結びついておりました。人は誰もが寂しい思いをして、それを断ち切る為に居場所を探し彷徨い求めます。そして最適な場所が見つかったと思ったら、勿論居心地が良くなり、無闇に離れたいとは思わなくなります。ただし、そこが本質的な「ユートピア(楽園)」かどうかは人によって感じ方が違ってきます。本人が幸福だと思っていても、本人と関わりのある人にとっては傍迷惑で生き地獄かもしれない。そのような考えから「居場所を求める(固執する)流浪の民」というイメージでこのタイトルを選びました。


元々私が考えたタイトルは「There was no”Utopia”(ユートピアはなかった)」と若干説明がかっていたタイトルでした。しかし、楽曲のテーマ擦り合わせの際に多嘉喜さんから「曲の中で内容をしっかり提示するから、タイトルではあまり説明しすぎない方が良いかもですね。」とアドバイスを頂き、改名しました。結果的に説明臭くなくなりスッキリして良いタイトルになりました。やはり第三者の声って大事ですわ。


あとまあ、多嘉喜さんのヴァースは改めて読むと胸が震えてしまいます。「新しいスニーカーできな粉まみれのわらび餅を踏みしめる時の〜」なんて読み出しなんて私は一生思いつきやしません。私は敢えてこの楽曲では間をゆっくり取る事に重きを置いて丁寧に読む事を心掛けるようにした為、言葉がやや少なめになっておりますが、何かもう多嘉喜さんの表現力と比べてしまうと自分の内容もうちょいどうにかならんかったのかと…いや後悔しても仕方がありません。精進して参ります泣。



 不意に咲く華



これは普段MPC(※3)におけるフィンガードラム(※4)の先生であるShogun Beatzさんがトラックを作成して下さりました。まず事前に私が理想としている既存の楽曲と書きたいテーマをリストアップしていき、それらの内容を参考にShogunさんがトラックを作成していきました。普段はHIP HOPカルチャーを中心に活動されているShogunさんですが、今回は私の主な活動スタイルが詩作(SPOKEN WORDS)という事もあって、RAP向きというよりかは最大限私のスタイルに寄り添う形で作業を進めて下さったとの事です。いやはや本当に感謝の気持ちしかございません。


結果的にHIP HOPの楽曲でもあまり見られないような、ゆったりとしながらもしっかりと鼓膜をいやらしく刺激する、素晴らしく陰鬱なトラックを作成して下さりました。Shogunさん自身も「完全にハルタ君のスタイルに寄り添いながら作ったので、最近の流行りのラッパーとかじゃ絶対に乗り難いトラックだと思います笑」という風に仰っていました。尚且つ自分が好きな90年代の日本語ラップの空気感も兼ね揃えているので、本当に思い入れの強い1曲でございます。


トラックを頂いた時、まず「絶対に自分の強みを活かせるテーマで詩を書いてやろう」という思いがありました。そこで思いついたテーマが「自殺」でした。まあ敢えて名前などは伏せますが、数年前に日本の音楽シーンで大ヒットした楽曲が「自殺を肯定しているのではないか」と一時世間を騒がせた事があり(真偽は不明ですが)、当時それを聞いて「そんなに美しいものじゃねぇだろ」と怪訝に感じてしまった経緯があり、ではちょうど良いだろうという事でこのテーマを選んだ次第でございます。


タイトルの「不意に咲く華」は「人が高所から飛び降りて地上に激突した際に、体から飛び出す血が真紅の華のように見える」という情景をかなーり不謹慎に比喩で現したものです。また「意識が曖昧となり、自分の意思とは裏腹に身を投げてしまい、血という華を咲かせてしまった」という意味も込められています。こうして改めて説明してみると、本当に自分は気が触れているなぁと感じてしまいます笑。




上記テーマを丁寧に説明した上で、友人であるTsuma yukoさんに本楽曲のアートワークも描いて頂きました。これがまた出来栄えが凄く、自分の要望を最大限に応えて下さりました。もうこのアートワークが出来上がる為に詩を書いたんじゃないのかと思うくらい、陰鬱で、残酷で、美しいデザインに仕上げて下さりました。作品を彩ってくれて本当に感謝です。


実はこの楽曲の詩にはある仕掛けが施されていまして、1番は文章の中に数字が、2番は色の名前が隠されております。特に1番は文章内で16からカウントダウン形式で数字が刻まれております。「0になる前日も〜」という部分の歌詞はそこに通じてる訳なんですね(こんだけ説明したら逆にダサいんじゃないかと思ってしまいますが、誰にも気づかれないままもしゃくなので言いました)。この縛りを入れてしまった事で作詞はかなり難航しました。まあ、単純に自分の才能の無さもありますが笑。


とはいえ、人が自死を選ぶメカニズムみたいなものをこれでもかと凝縮した珠玉の一曲になっていると自負しております。先程も記したように、自分が詩を書く上での強みを最大限に活かした楽曲となっておりますので、充分に世界観を堪能して頂きたいですね。




タイトル「Lilac EP



Lilac(ライラック)」は日本語で「紫丁香花(ムラサキハシドイ)」というモクセイ科ハシドイ属の植物(まあ余程の植物好きではない限り恐らくピンと来ないかもしれない)の事なのですが、この花をEPのタイトルにした理由はまず「不意に咲く華」繋がりで何かしら花の名前から選びたいと考えた事が発端でした。そこで様々な花の名前を調べた所、この「Lilac」が言いやすくて響きが良かった為、花言葉を調べてみると白い「Lilac」の花言葉が「青春の喜び」「無邪気」「若き日の思い出」などという意味を持つ事が分かりました。若かりし20代に青春というものを味わえなかった自分の青春時代は今まさにこの瞬間に違いないという思いもあり、迷わずこのタイトルを選びました。





さて、大変長くなってしまい、目がとても疲れた事でしょう。申し訳ございません。楽曲の解説は以上となります。皆様、飽きる程読み込んで頂き、鼓膜が悲鳴をあげる程聴いて頂ければこれに勝る幸福はございません。10.15のLIVEもまだまだ絶賛予約受付中です。宜しくお願いします‼️






※1 MAKI THE MAGIC

→MAKI & TAIKI及び下記キエるマキュウのメンバー。1980年代の日本語ラップ黎明期からDJ活動を行っており、骨太なサンプリング・ビーツを駆使してシーンから支持を集めた。プロデューサーとしても様々なミュージシャンの楽曲を手掛けている。2013年7月14日、脳内出血の為46歳の若さで急逝。


※2 キエるマキュウ

→BUDDHA BRANDのMCであるCQ、MAKI THE MAGIC、ILLICIT TSUBOIから成る日本のヒップホップ・グループ。「マネーメリーゴーランド」や「HAKONIWA」など、日本のヒップホップ・シーンにおいて様々なクラシックを残した。


※3 MPC

→アカイ・プロフェッショナル社のサンプラー、シーケンサー、及びパッドコントローラーを統合した楽器の製品シリーズ名を指す。「Music Production Center」の略とされている。


※4 フィンガードラム

→主に上記MPCを駆使した、指先でボタンを叩いてリアルタイムに演奏する手法。




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